Q36.5|Q36.5のものづくりはライダーから始まる。#02
- Q36.5

Q36.5の製品は、デザインから始まるのではありません。

まず考えるのは、ライダーがどのような環境で走り、どのような性能を必要としているのか。
その答えを探るために、素材を見直し、ときには素材そのものを開発する。試作品をつくり、実際に走り、データを集め、改良を重ねる。
そして、本当により良い製品になると確信できたときだけ、新しいものを世に送り出す。
「デザインは機能に従う」。
Q36.5の営業を統括するWalter De Luca氏は、Q36.5の製品開発についてそう説明します。
では、一着のウェアは、どのようにして生まれているのでしょうか。

DESIGN FOLLOWS FUNCTION
「For us, design follows function!」
Q36.5の製品開発について尋ねると、Walter氏はまず、Q36.5の基本的な考え方をこう説明しました。
デザインは機能に従う。
Q36.5がまず考えるのは、製品の見た目ではありません。
そこにあるのは、「ライダーに何が必要なのか」という問いです。
プロサイクリストからビギナーまで、すべてのライダーにより良いライディング体験を提供すること。そのために、特定の製品や素材がどのように体験を改善し、パフォーマンスを高められるのかを考える。
それが、Q36.5の製品開発における出発点です。
そして、この考え方は製品を「変える」ことにもつながっています。
新しい製品だから変えるのではない。
新しい製品によって、明確なイノベーションやパフォーマンスの向上を実現できるときにだけ変える。
Q36.5のR&Dは、最初から最後まで、この考え方を軸に進められています。

ボルツァーノという、毎日変化するテストフィールド
Q36.5のR&Dを語るうえで、ボルツァーノという環境を切り離すことはできません。
ドロミテの麓に位置するボルツァーノでは、季節によってだけでなく、一日の中でも環境が大きく変化します。
夏には、街中で暑く湿度の高い一日が始まることもある。
そこからドロミテの峠を越えるだけで、まったく異なる気候に出会うことがあります。
Q36.5の創業者とR&Dチームは日々自ら自転車に乗り、こうした環境の変化を実際に経験しています。
「適切なEquipmentを持っているかどうかが、ライドを大きく左右することがあります」
Walter氏は、こうした日々の環境がQ36.5の製品開発に大きな意味を持っていると説明します。
つまり、ボルツァーノは単なるR&Dの拠点ではありません。
製品が実際に使われる環境を、毎日のライドの中で経験できる場所。

それがQ36.5にとってのボルツァーノなのです。
その環境から生まれた代表的な例が、HYBRIDシリーズです。
変化する気候に対応しながら、ライダーがライドを楽しみ続けるためのEquipment。

第3世代へと進化したHybrid Que Jerseyは、異なる素材を戦略的に組み合わせ、身体の部位ごとに必要な機能を与えるボディマッピング構造を採用しています。
保温性、通気性、空力性能。
相反するように思える性能を、ひとつのウェアの中でどのように成立させるのか。
それを考えることも、Q36.5にとってR&Dの仕事です。
素材を選ぶのではなく、必要な素材をつくる

Q36.5の製品を特徴づけるもののひとつが、独自素材へのこだわりです。
Walter氏によれば、Dottoreラインでは最大85%もの製品に独自開発の素材が使われています。
その理由は明確です。
求める性能を実現できる素材が既製品の中に存在しなければ、自分たちでつくる。

最高の素材メーカーが用意する既存素材であっても、Q36.5が求める性能に届かなければ、そのまま採用することはありません。
素材メーカーに課題を投げかけ、共同で開発し、新しい性能を実現する。
もちろん、新しい素材の開発には大きな投資が必要です。
それでもQ36.5がそこに投資するのは、素材そのものを目的としているからではありません。
素材の機能と、それをウェアのどこに、どのように配置するか。
その組み合わせによって、ライダーにより良い体験と、可能な限り高いパフォーマンスを届けるためです。
失敗しなければ、最適解にはたどり着けない

では、その性能はどのように確認されるのでしょうか。
答えは、試作とテストの繰り返しです。
Q36.5では、試行錯誤と失敗を最適な結果にたどり着くために欠かせないプロセスと考えています。
R&Dチームには経験豊富なライダーが集まり、プロトタイプを実際に着用して走り、その違いを評価します。
そして、すべての製品が製品化されるわけではありません。

フィットと機能が、Q36.5の求める「最適な組み合わせ」に到達するまで、開発期間が長くなる製品もある。
なかには、その組み合わせにたどり着くことができず、発売されないものもあります。
作ったから発売するのではない。
Q36.5が求めるところまで到達できたものだけが、製品になるのです。
Pinarello – Q36.5 Pro Cycling Teamという、もうひとつのR&Dフィールド

そしてQ36.5には、もうひとつ強力なテストフィールドがあります。
Pinarello – Q36.5 Pro Cycling Teamです。
Q36.5にとって、このチームは単なるスポンサーシップの対象ではありません。
チームを運営することで、30人のトップライダーがレースでもトレーニングでも、天候に関係なく製品を使用する環境があります。
メーカーにとって、これほどリアルなフィールドテストはありません。

選手から継続的にフィードバックを受けながら、まだ一般のライダーには提供されていないソリューションを試す。
そして、その限界を探る。
その結果、Q36.5が「市場に出すべきだ」と判断したとき、初めて製品化へ進みます。
プロチームは、完成した製品を使って性能を証明するだけの存在ではない。
製品そのものを一緒につくり、限界まで試すための重要な開発パートナーなのです。
感覚だけでも、データだけでもない

R&Dにおいて、ライダーの感覚は重要です。
しかし、Q36.5の開発は感覚だけに頼っているわけでもありません。
その一例が、CORE*1とのパートナーシップです。
Q36.5では、体温調節がパフォーマンスにどのような影響を与えるのかを、データとして計測・分析する研究を行っています。
そこで得られたデータはR&Dに戻されます。
素材の組み合わせを調整し、生地の構成を見直す。
そして、ある開発がアスリートのパフォーマンスにどのような影響を与えるのかを確認したうえで、工業生産へと進んでいきます。
身体で感じること。
そして、データで確認すること。
その両方を行き来しながら、製品は少しずつ磨かれていきます。
*1 CORE(コア)とは、スイスの企業が開発した、身体の「深部体温(体の中心部の温度)」をリアルタイムで正確に測定できる小型のウェアラブルセンサーおよびテクノロジー。
「新しくするために変える」のではない

Q36.5にとって、新製品をつくること自体が目的ではありません。
イノベーションがない。
パフォーマンスの向上がない。
それなら、あえて変えない。
Q36.5が大切にしているのは、製品を更新することではなく、ライダーにとって本当に意味のある進化を実現することです。
「If there’s no innovation or performance improvement, we consciously wait for a new product launch.」
イノベーションやパフォーマンスの向上がなければ、新製品の投入を意識的に待つ。
毎シーズン新しいモデルを発表することが当たり前になっているサイクリング業界にあって、この判断には明確な理由があります。
「新しい」という理由だけでは、製品を変える理由にはならない。
より良くなったときにだけ、変える。
それが、Q36.5のものづくりに対する姿勢です。
完成は、終わりではない
では、製品はいつ完成するのでしょうか。
Q36.5では、フィット、機能、パフォーマンス、そして美しさが、目標としていたレベルに達したときに製品は「準備が整った」と考えます。
しかし、それで探求が終わるわけではありません。
Q36.5は常にプロトタイプの環境にいる。
完成した製品を送り出した後も、次にどう改善できるのかを考え続ける。
それは、#01で紹介した「Equipment」という考え方ともつながっています。
ライダーが走る。
環境が変わる。
新しい課題が見つかる。
そして、また試す。
Q36.5のR&Dに「完成」という言葉があるとすれば、それはひとつの製品についての区切りに過ぎないのかもしれません。
その先には、また次の問いがあります。
もっと良くできるだろうか。

その問いがある限り、研究開発は終わりません。
Q36.5の製品は、デザインから始まらない。
ライダーの必要性から始まり、素材、設計、試作、実走、データ、そしてまた改善へと続いていく。
そうして生まれた一着が、ライダーにとっての「装備品」になる。
私たちは、まだ探求の途中です。

