PROFILEDESIGN | プロファイルデザインについて聞いてみた #02
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#02 PROFILEDESIGN Momentum
THE ANSWER編集部(以下TA):トライアスロンとロードレース(タイムトライアル)では、当時受け入れられ方に差があったように感じていますが、なにか理由はありますか?
イアン:ご存じの通り、プロロードレースを統括するUCIには、タイムトライアル用のポジションや機材に関して、「この範囲に収めなければならない」という厳格な規定があります。私もすべてのルールを完全に把握しているわけではありませんが、身長が高くても低くても、その規定のボックス内に収める必要があります。そして、それがライダーの体格などでも調整が必要なエアロバーの長さや角度などにも大きな影響を及ぼします。
一方で、トライアスロンにはそういった厳しい制限がありません。
もちろん最近は新しいルールも導入されつつありますが、それでもUCIのタイムトライアル・バイクのルールほど厳格ではありません。ワールド・トライアスロンの規則は、もう少し柔軟です。だからこそエアロバーの開発は、タイムトライアルよりもトライアスロンのほうが大きく発展してきたのだと思います。
結局のところ、それは競技を統括する団体と、そのルールによるものと言えます。

THE ANSWER編集部(以下TA):その当時、選手からのフィードバックで印象的なものがあれば教えてください。
イアン:その当時だけでなく今にもあてはまる話ですが、過去から現在まで私たちが受け取っているフィードバックの中で特に重要なのは「安全性」です。
私たちは、すべての人に安全に使ってもらいたいと考えていて、安全性を最優先事項にしています。市場にはさまざまなアダプターキットを組み合わせて使うブランドも多くあります。しかし、それらの中には十分にテストされていないものもあり、私たちはそういった状況に懸念を抱いています。
私たちは、多くの顧客からは、「ワンストップで完結するソリューション」を提供している点を評価されています。つまり、あるパーツを私たちから買い、別のパーツを他社から買い、それを未検証の状態で組み合わせる必要がないということです。私たちは多くのオプションと様々な種類のスモールパーツを用意していて、お客様は私たちから製品を購入すれば、すべてのパーツが単体でも、組み合わせた状態でもテスト済みであることを理解していただいていますし、それはブランドとして非常に重要なことだと思っています。
やはり、安全性が第一です。
その点は、多くの顧客やディストリビューターからも高く評価されていますし、私たちにとっても非常に重要であり印象的なフィードバックですね。
THE ANSWER編集部(以下TA):拡張させるためのアダプターや細かなオプションのスペーサーを自社で用意しているからなせる業ですね。この当時はトレンドの変化も激しかったと思いますが「エアロダイナミクス」と「負荷と快適性」のトレードオフについてどのように捉えていましたか?
イアン:それはかなりR&D(研究・開発)よりの質問ですね(笑)。
私たちは、このテーマを大きく2つの方向から考えています。
ひとつは、「完走すること」を重視する人たちです。
彼らはそこまでエアロダイナミクスを気にせず、とにかく快適にレースを終えたいと考えています。
もうひとつは、「エアロダイナミクス性能を最優先したい」人たちです。
多少の不快感があっても、より速く走れることを求めます。
ただ、これは本当に個人的な要素が大きいんです。もちろん、私たちとしては「エアロダイナミクス」と「快適性」を両立してほしいと思っています。しかし、現実には常に両方を完璧に得られるわけではありません。さらに、これらに影響を及ぼすのはエアロバーだけではありません。サドルやその他のパーツ、またバイクフィット、さらにはバイクフィッター自身の考え方など、さまざまな要素が絡んでいます。私たちは優れた製品を作ることはできますが、マーケットに出た後には、コントロールできない要素がたくさんあります。あるフィッターはこういうポジションを好み、別のフィッターはまた違うポジションを好む、といったことですね。だからこそ、私たちは風洞実験やCFD解析などで製品テストを重ねていますが、最終的には「アスリート本人」に行き着きます。重要なのは、「人を正しいポジションに導くこと」であって、必ずしも製品そのものだけの問題ではありません。そして、それこそが私たちの製品の強みでもあります。私たちの製品は、ユーザーを望むポジションの大半へ柔軟に調整できる幅を持っているのです。
THE ANSWER編集部(以下TA):プロファイルデザインの成長とともに製品ラインナップが拡大され、ブランドの一貫性は失われかけたときはなかったのですか?
イアン:これも難しい質問ですね(笑)。
私たちのメッセージ自体は、ずっと変わっていないと思います。ユーザーが快適で、なおかつエアロダイナミクスにも優れた状態を感じられるようにすること。それが常に中心にあります。
この38年間で、ブランドメッセージが大きく変わったことはないと思います。
私たちは、最も高価なブランドにも、最も安価なブランドにもなりたいとは思っていません。もちろん高価な製品もありますし、手頃な価格の製品もあります。しかし根本にある考え方は変わっていません。私たちは常に、「バイクをより速く走らせること」に取り組んできました。そしてそれは、ブランド創設初日から変わらない理念だと思います。
また、先ほども言ったように、安全性は最優先事項です。アメリカの企業として、私たちは法律や規制を十分理解しています。そのため、製品テストにおいても、求められる基準を超えるレベルで常に試験を実施しています。そうすることで、私たち自身も安心して眠れるわけです(笑)。
ですので、最終的な答えとしては、「ブランドメッセージは大きく変わっていない」ということですね。
THE ANSWER編集部(以下TA):これまでに所謂失敗作だったと思う製品は?
イアン:もちろん期待していたほど売れなかった製品はいくつかありますよ。
あるいはマーケットに対して少し先を行き過ぎていて、まだその必要性を把握してもらえなかった、というケースもあります。どんなブランドでも、売れない製品はいくつか抱えていると思います。結局のところ、ある意味では当たり外れのある世界だと思います。
重要なのは、セールスチームとR&Dチームのコミュニケーションだと思っています。R&D側が、市場やディストリビューターが何を求めているのかを、セールスチーム経由で正確に理解することが大切です。今すぐ名前を挙げようと思えばいくつか出せますが、期待通りに展開できなかった製品も確かにありました。
でも、私たちはそこから学ぶんです。
私たちも人間ですから、完璧ではありません。もし失敗から学ばず、「自分たちは常に正しい」と思っていたら、成長はありません。それに、具体的な製品名を挙げるには、実際に売上データのシートを見ないと分からないですね(笑)。
ある国では売れる製品も、別の国では売れないことがあります。例えば、日本では短めのエアロバーがよく売れますが、ドイツではそうではありません。では、その製品は失敗作なのか?
そうではありません。その市場に合っていなかっただけです。
THE ANSWER編集部(以下TA):体格の違いもありますよね。日本人は腕が短めだったりします。
イアン:そうですね。
さらに言えば、すべてのバイクブランドが日本人向けに最適化されたバイクを作っているわけではありません。だからこそ、私たちは自社製品側で調整し、ライダーがベストなポジションを取れるよう補完する必要があります。そうすることで180kmや190kmを走り切り、その後しっかりランに移行できるようになるのです。
THE ANSWER編集部(以下TA):少し製品よりの質問ですが、調整幅が非常に広く、サイズ調整のオプションパーツも豊富ですよね。この狙いは?
イアン: 基本的な考え方として「良いポジションを作ること」が大前提にあります。そして良いポジションが実現できれば、大半の場合はエアロダイナミクスも優れているんです。逆に言えば、エアロバーから上体を起こしてブラケットポジションに移るたびに、非常に大きな風を体に受けることになります。だからこそ、長時間エアロバーのポジションを維持できることが非常に重要です。そのためには「フィット」が重要になりますし、理想のフィットを実現するために、多様なポジション調整やパーツの選択肢が必要になるわけです。

そして現在、フィットに関して新しい取り組みも進めています。近いうちに「Fit App(フィットアプリ)」というものをリリース予定です。
これは、ハンドルバーの情報や、パッドスタック/リーチ、バイクブランドなどを入力すると
・エアロバー下に何ミリのライザーが必要か
・エアロバーの長さはどれくらいか
・安全に固定するために必要なボルト間隔はどれくらいか
などが自動で分かるようになります。
このアプリは、あと半年程度でリリースできる予定です。PC用アプリとして提供し、すべてのバイクフィッターが無料で使えるようになります。私はこれが“ゲームチェンジャー”になると思っています。
例えば、ユーザーのパッドスタックやリーチ、パッド幅、グリップ位置、エクステンション長などを入力します。
さらに、私たちはチルト(角度調整)機能も持っている唯一のブランドなので、どのくらいのチルト角が欲しいか、どの程度の許容範囲かなども設定できます。
反対に、例えば「Cervélo P-Series の54サイズ」というように、実際のバイク情報を入力可能です。そして、そのバイクに対して、どのハンドルバーを使うか、どのブラケットを使うか、どのエクステンションパッドを使うかなどを選択すると、理想的なフィット状態を表示してくれます。

具体的には、
・Tri Stem
・9mmスペーサー
・A2ブラケット
・10mmパッド
一例ですが、これらを組み合わせた場合、どの高さのコラムが必要か、何mmのスペーサーが必要か、必要なボルト長は何mmかまで表示されます。
さらに、そのポジションが「そのフレームサイズの適正範囲内にあるか」も表示されます。もし適正範囲外なら「そのバイクサイズでは理想ポジションを出せない」ということも表示されます。
つまり「そもそもバイクサイズ選びが間違っている」あるいは「そのフレームでは理想のパッドスタック/リーチが実現できない」ということが分かるわけです。
このアプリはオンラインで無料提供される予定で、現時点ではスマートフォン対応は未定ですが、バイクフィッターはPCからログインして自由に使用できます。私たちは、これが本当に業界を変えるものになると考えています。
なぜなら、バイクフィット作業の“試行錯誤”を減らせるからです。
通常のフィッティングでは「10mmスペーサーを入れてみよう」「違った、20mmが必要だった」「また全部外して組み直す」という作業が頻繁に発生します。どのような熟練のフィッターであっても、相手は人間ですから経験則だけでは完結しません。しかし、このアプリなら、その大部分を事前に解消できます。非常に効率的で、時間短縮が可能なので、バイクフィッターやメカニックにとって大きなメリットがありますね。基本的にはバイクフィッター向けのツールで、使用前には簡単な導入トレーニングも行う予定です。正しく使ってもらうためです。
汎用性の高い製品を幅広くラインナップする一方で、A3プラットフォームと呼ばれる共通規格を採用した製品の拡充を進めています。ベースバー側にA3プラットフォームが設けられ、そこにプロファイルデザイン製品を積み上げていける仕組みになっています。
現在BMC、Canyon、Cervélo、Cube、Wilierなどのブランドが、このA3プラットフォームを採用しています。つまり、彼らのTA/TTバイクのベースバーには、専用の取り付け形状があり、そこへプロファイルデザインのスペーサー、チルトブラケットを含むブラケット、リーチエクステンダー、アームレストなどを組み合わせられるようになっています。
言わば、私たち独自の「業界標準」を作り上げたわけです。
上記以外にも、複数のバイクブランドが私たちのバーを採用しています。つまり、多くのブランドが私たちのベースバーを採用し、その上にシステムを構築しているのです。
そして私たちは、「世界で最も安全なシステム」を提供していると自負しています。
特に、十分な検証が行われていないサードパーティ製のCNCアダプターキットに頼らず、安全性を確保している点が重要です。私たちの製品はすべて鍛造パーツで構成されていて、単体でも、完成状態でもテストを実施しています。台湾にはQuality Control(品質管理)部門があり、毎日疲労・耐久試験を行っています。
さらに、私たちは一般的な基準以上の試験を行っています。通常、多くのブランドはISO試験を行った後、疲労・耐久試験では新品のバーを使います。規格のルール上、それは問題ありません。
しかし、私たちはそうしません。ISO試験を行った“同じバー”を、そのまま疲労・耐久試験にも使います。つまり、製品に対して通常以上のストレスをかけているのです。
THE ANSWER編集部(以下TA):それは調整幅の広さにも関係していますか?
イアン:はい、もちろん関係しています。なぜなら人によって体格は大きく異なります。
胴が長く脚が短い人もいれば、逆に脚が長く胴が短い人もいます。私たちは、そうしたあらゆる体型に対応できるよう、必要なパーツをすべて揃え、すべてにおいて品質管理を行う必要があるのです。ただ「フィット」するだけでなく、あらゆるライダーが安全に使うことが出来なければなりません。
THE ANSWER編集部(以下TA):今現在のプロファイルデザインの強みは?
イアン:やはりエアロダイナミクス、快適性、そして安全性。
このあたりが私たちの強みだと思います。そして、それらをどう実現するか―そこに私たちのノウハウがあります。
それぞれの詳細についてはこれまでの回答でお話出来たと思いますので、良かったらもう一度読み返してみてください(笑)
THE ANSWER編集部(以下TA):今後のトライアスロン機材は、どのような進化を遂げると考えていますか?
イアン:私たちは、業界全体が同じ基準の上に立つべきだと考えています。私たちは製品を非常に厳しくテストしています。それは、すべてのユーザーの安全を確保したいからです。そして今後、トライアスロンの統括団体も同じ方向へ進んでいくだろうと考えています。
個人的には、まずトップレベルのプロ選手たちから変化が始まると思っています。プロ選手たちは、自分たちの機材が安全であり、適切にテストされていることを示す必要があります。なぜなら、多くの人が彼らを見て、「ああなりたい」と憧れるからです。つまり、彼らには競技を正しい方向へ導く責任があるということです。それがルールとして強制される形になるのか、あるいは選手やブランド側が自主的に動くのかは分かりません。ただ、すでに一部のバイクブランドでは、プロ選手が極端なポジションを取ることを認めていません。それらのブランドは、自社で安全性を検証した範囲のポジションのみを許可しています。だから私は、今後は多少の規制強化が進むと見ています。しかし、それは私たち全員にとって良いことだと思っています。
なぜなら、「安全である」と確信できるからです。
THE ANSWER編集部(以下TA):日本のマーケットについてどのように感じていますか?
イアン:この36年間、日本は私たちにとって非常に良いマーケットでした。日本のマーケットはとても安定しています。新しく競技を始める人もいれば、競技を離れる人もいますが、全体として常に一定のコンシューマーが存在しています。
そして世界中のレースを回っていると、本当に多くの日本人選手を見かけます。アイアンマンの日本人通訳スタッフもいますよね。アジアパシフィック地域の多くのレースに来ていて、とても素晴らしいアスリートたちです。私は、日本のトライアスロンは非常に良い状況にあると思っています。最近では日本でもフルディスタンスのアイアンマン大会が開催されるようになりましたし、それも良い流れだと思います。さらに、日本の人たちは海外レースへ行くことも大好きです。
私たちはアジア各地はもちろん、コナ、チャレンジ・ロート(ドイツ)など、さまざまな場所で日本人選手を見かけます。日本のトライアスロンは、とても良いポジションにあると思います。
THE ANSWER編集部(以下TA):最後に日本のコンシューマーに伝えたいことは?
イアン:まずは、これからも私たちの製品を買い続けてください(笑)。
家族を養わないといけないので。…冗談です(笑)。
本当に伝えたいのは、日本のユーザーの皆さん、そしてディーラーの皆さん、さらにカワシマサイクルサプライの皆さんへの感謝です。
先ほども言ったように、ビジネスはずっと成長を続けています。急激ではなく、小さなステップを積み重ねるような成長ですが、すでに高い位置にいるブランドにとって、それはとても良い成長だと思っています。ですので、日本のトライアスロンのマーケットは非常に良い状態にあると思います。
それに、私は日本人選手と競い合うのが大好きなんです。いつも日本人のトップ女性選手たちに抜かれるんですが、彼女たちは小さなストライドで本当に速く走るんですよ。
だいたいランの25km地点くらいで「うわ、なんて速いんだ…」って思っています(笑)。
本当にタフで素晴らしいアスリートたちです。そういうところが好きですね。
取材を進めると、普段ユーモアが有り余るイアンの口から思いもよらなかった言葉が沢山聞けた。
もちろん良い意味である。
近年は3Dプリンターの発展で、アイデアを形にするまでの時間が短縮されているが、製品化するまでに必要な道のりは変わらず多くの時間と手間をかけている。ハイクオリティな製品を開発するために、より多くの試作がおこなわれ、安全性をテストし、製品の完成度をさらに煮詰めることに時間とコストをかけている。
Answer.
トライアスロンを愛するスタッフが、すべてのトライアスリートにフィットし、エアロダイナミクス、快適性、そしてなにより安全性を享受することが出来る製品を、世に送り出し続けるトライアスロンマーケットのトップランナー。
一般的な規格の製品ラインナップを維持しながら、A3フォーマットのような新しい規格の構築、最速で形になったアイデアからの取捨選択、そして疲労・耐久試験。
彼らが求めるフィット、エアロダイナミクス、快適性、安全性を網羅した製品を開発するためには、絶対的に必要であり、手を抜くことが許されない。彼らのアイデンティティとブランドフィロソフィーはそこに確かにあった。
[了]
PHOTO & INTERVIEW: Hiroyuki Oya – Cycle Sports
EDIT: Hirofumi Fukuda